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適切な治療で症状を改善させましょう

金属アレルギーの症状がすでに現れている場合に必要となる治療は、まず口腔内の金属を排除することだといえます。しかし治療方法にも選択肢があり、一人ひとりの症状や特定されるアレルゲン、また身体の状態などさまざまな条件をふまえて決定することが必要です。
金属アレルギーの治療は、接触性皮膚炎の治療と同じようなものであるといえます。接触性皮膚炎の治療では、まずアレルゲンを特定し、それとの接触を避けることで治癒に導いていくという方法がとられます。
しかし原因を特定することなく、症状が現れている部分に漫然とステロイド外用剤を使用するなど、適切な治療が行われていないケースもあるのも事実です。そういった場合は、長引くだけではなく、治癒が難しくなってしまうと考えられます。また、もし歯科金属アレルギーであることを確認せずに治療を進めれば、金属を除去しても症状が改善されないこともあるでしょう。
まずはアレルゲンを調べること。これが、金属アレルギー治療においてとても重要な過程になるといえるのです。
こちらでは金属アレルギーの治療法についてご紹介します。

金属アレルギーの問診

まずはパッチテストで診断

金属アレルギーの治療を開始する際には、まず患者さんがどの金属でアレルギー反応を起こすのかを正しく把握することが必要です。これを調べるにはさまざまな方法がありますが、一般的にはまず最初に「パッチテスト」を実施します。
パッチテストとは、皮膚の上に微量の金属試薬を塗布し、その上をばんそうこうで覆って決められた日数をおき、反応が出るかを1種類ずつ調べていく検査です。かゆみが出たり、赤く腫れたりした場合には、その金属がアレルゲン(アレルギーの原因となるもの)であることがわかります。闇雲に治療をするのではなく、このように原因となる金属を特定した上で、それに対する治療を開始していかなければなりません。

パッチテストについてはこちら

パッチテストで調べられる歯科用金属
  • 金(テトラクロロ金酸)
  • イリジウム(四塩化イリジウム)
  • 銅(硫酸銅)
  • クロム(硫酸クロム)
  • 鉄(塩化第二鉄)
  • 銀(臭化銀)
  • 水銀(塩化第二水銀)
  • 亜鉛(塩化亜鉛)
  • 白金(塩化白金酸)
  • マンガン(塩化マンガン)
  • スズ(塩化第二スズ)
  • クロム(重クロム酸カリウム)
  • コバルト(塩化コバルト)
  • ニッケル(硫酸ニッケル)
  • アルミニウム(塩化アルミニウム)
  • インジウム(三塩化イリジウム)
  • パラジウム(塩化パラジウム)
  • チタン(酸化チタン)
  • チタン(塩化チタン)

治療方法

金属アレルギーの治療法は一つではありません。一人ひとりの患者さんに適した方法をとり、原因となる金属アレルゲンの除去治療を進めることが大切です。

治療法1:メタルフリー治療(口腔内金属の除去)

治療法1:メタルフリー治療(口腔内金属の除去)

アレルゲンとなる金属が特定できたら、口腔内の治療に使われている該当する金属を取り除くことが必要です。歯科治療では金属が用いられることが多く、つめ物やかぶせ物だけでなく、かぶせ物の土台や入れ歯の金具などさまざまであります。銀歯にはパラジウム・金・水銀・スズなどを含有する歯科金属が使用されることが多く、矯正器具などにはニッケル・コバルトが含まれます。またインプラントによく使用されるチタンも頻度は少ないものの、アレルギーを起こしたという報告はあります。
口の中に入っている歯科治療物に金属アレルギーの原因となっている金属がある場合、それらを取り除き、セラミックやプラスチックなどの金属以外の材質に置き換えていく必要があります。このようなメタルを使用しない治療を「メタルフリー治療」といい、近年日本でも広まりつつあります。

メタルフリー治療に関してはこちら

治療法2:金属摂取の制限・経皮接触の制限

私たちが普段何気なく使っている日常生活品には、金属が使用されているものがたくさんあります。例えばベルト、腕時計、メガネなどですが、それらに触れてかゆみなどが出るのなら、まずはそれらに触れないように注意することが重要です。またニッケルメッキやステンレスの調理器具はニッケルを溶出するため、ニッケルアレルギーの方は使用を避けたほうがいいでしょう。
それらとの接触を極力避けても軽快しない場合には、食べ物にも注意してみましょう。飲食物に含まれる微量の金属摂取が問題を引き起こすこともあるからです。チョコレート、ココア、豆類、香辛料、貝類、レバー、胚芽などにはニッケル・クロム・コバルトなどが特に多く含まれています。コーヒーや濃いお茶などにも金属がたくさん含まれており、日ごろから多くとる習慣がある方は、これらの摂取を制限することで症状が改善することもあるのです。
自分の嗜好を見直すこと。これも金属アレルギー治療の大事な一つの過程ともいえるでしょう。

治療法3:薬物療法・キレーション

治療法3:薬物療法・キレーション

患者さんの年齢や全身疾患の状態などにより口腔内金属の除去が難しい場合、もしくは施行しているのにもかかわらず効果が不十分な場合、体内に取り込まれた金属の排泄を促す薬剤を用いる「キレーション」という治療法をとると有効なことがあります。これは、体内の金属を吸着して便や尿とともに排泄させる効果がある「クロモグリク酸ナトリウム」や「金属キレート剤」という薬剤を用いるものです。

クロモグリク酸ナトリウム(インタール®disodium cromoglycate:DSCG)

気管支喘息の吸入薬にも使われているDSCG(クロモグリク酸ナトリウム)は安全性が高く、アレルゲンの吸収を抑制できる薬です。金属アレルギーは食事制限による治療も行われますが、それでも効果がでないときにDSCG内服薬を使うケースがあります。歯科金属によるアレルギーの場合は、食事中と就寝中に金属が溶け出しやすいと推測されるため、毎食30分前に加えて就寝前にも服用します。

金属キレート剤

体内に取り込まれた金属を排出する金属キレート剤です。服用後は一時的に血中濃度が上昇しますが、その後に尿として体外に排出されるため、金属アレルギー治療に有効だと考えられています。しかし服用した症例の半数以上で悪心・嘔吐・肝障害などがみられ、使用しやすい薬剤とはいえません。
テトラサイクリン系の薬剤も実験段階ではありますが、金属キレートへの有効性が示唆されています。また金属制限食とミノサイクリン塩酸塩の併用も病巣感染への効果、活性酸素抑制効果があるため、金属アレルギーに効果があると考えられていますが、まだ十分な検証はされていません。

キレーションは、一部のエステティックサロンやデトックスサロンなどで行われていることもあります。しかしキレート剤にはいくつかの種類があり、中には副作用が強いものや取り扱いに注意が必要なものもあるため、注意が必要だといえるでしょう。

この他にも、骨接合金属や血管内ステントといった体内に埋め込む医療材料よるアレルギーも報告されており、注意が必要です。なお花粉症などにおいて行われる、患者さんにアレルゲンを少量ずつ投与し続けていく「脱感作・減感作療法」は、金属アレルギーについては不向きだといえます。

Ⅳ 歯科金属を用いた弊害

金属アレルギーについて トップ

Ⅵ 金属アレルギーの予防法

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